――『ねえ、あなた。世那からメールの返事きた?』

キッチンで料理をする母親の姿。少しでも豪勢にしようと料理本を広げている。

『お前こそまだきてないのか?』

リビングのソファーに座る父親。テーブルに置かれている白い箱を見つめてはソワソワと中身を確認していた。

【今日の夜は家に帰ってきてください。ちゃんとこれからのことを話し合おう】

そう、互いに同じ文面を送った。

来るかどうかは分からない。だけど仕事を早く終わらせて、その準備を着々と進めていく。

リビングのカレンダーに付けられた印。
〝7月14日、世那の誕生日〟

これをきっかけにわだかまりをなくそうとしていた。母はたくさんの料理を作って、父は大きなイチゴのケーキを買ってきた。

ろうそくは14本。

料理の下準備がある程度終わったところで、母は慣れた手順で揚げドーナツを作りはじめた。

本当はもうあまり好きではないかもしれない。
それでもあの幼少の頃の嬉しそうな顔が忘れられなくて、つい作ってしまう。