大丈夫。私がいる。
この力でなにかを変えられるのなら、きみのために役に立つのなら、なんだって読み取ってみせる。
私も詩月と同じように地面に膝をつけた。そしてずっとここに来てから感じていた〝誰かの想い〟
まだある。まだ感じる。
目を瞑ればよみがえるここにあった詩月の家。
ガラス張りの窓に吹き抜けの高い天井。
本当にここには悲しい結末しかなかった?
ううん。それだったらこんなにも触れていないのに想いが溢れ出すわけがない。
「詩月。まだ終わってないよ」
「え……?」
私は左手を差し出した。
真実はまだ眠ったまま。その眠りから覚まさせるのが私の唯一のできること。
「ちゃんとするために逃げちゃダメな時でしょ?」
いつか言った詩月の言葉をそのまま返した。
もう十分苦しんだ。涙も枯れるほど泣いた。
だったら最後はどうするの?
どう、なりたいの?
詩月がそっと私の左手を握る。私は小さく頷いて右手で家が建っていたはずの地面に触れた。
電気は走らない。
その代わり流れてくるのは穏やかで優しい光景だけ。



