頭の中でぐるぐると回避する方法を探していた。その間にも詩月は私をじっと見つめていて。光の屈折によって色が変わる詩月の目を私は見れない。
「……か、勘?」
誤魔化すために思いつく言葉がそれしか浮かばなかった。
「はは、なにそれ。勘なわけないじゃん。俺猫の名前なんて誰にも言ったことないし、猫の話もしてたわけじゃないのにさ」
「そ、それは……」
「それに〝おはぎ〟なんて名前普通に考えて思い付くはずないし、あの場で言うにはおかしな言葉だよね?」
「………」
ああ……本当に面倒くさい。
このまま走って逃げてしまおうか。いや、同じクラスだし明日教室で同じ話をされることのほうが困る。
つい変わった名前だったから口に出してしまったけど呟いた程度の小さな声だったし、聞き流してくれたら良かったのに……。
「もしかして羽柴って、なにか見えるの?」
ドキッと心臓が跳ねる。
もっと冗談っぽく言われると思ったのに詩月の顔は真剣で。そのビー玉のような瞳に吸い込まれそうだ。



