君には僕しか見えない。



「…遙さん、先に入って。」

「ああ、うん。」

彼女は教室の後ろの扉に手をかけたが、
俺を振り返った。


「ど、どうしたの?」


「……勉強、教えてね。」

「……え?」

「約束したよ。」

「……いや、約束はしてないような……。
まぁ、今度ね。」

「ありがとう!」

彼女は嬉しそうに笑った。

そんなことで……と俺は苦笑する。

廊下の窓から差し込む陽の光が彼女の方頬を
照らす。

何となく彼女の目を見ると、当然だが
俺が映っていた。

ああそうか、彼女は今俺を見て、
俺にだけに話してるんだ。


そう思うと、何でか急に体が熱くなった。