1人で部屋にいると心が枯れてしまったような感覚にとらわれる。


机の上の課題は手つかずで、気が付けばクラスメートたちの顔を思い出していた。


みんなの心の闇をあたしは知らない。


みんなの悩みをあたしは知らない。


毎日顔を合わせているというのに、あたしはみんなの事を何も知らないのだ。


今日菜々花から聞いた話はあたしにとって衝撃的なものだった。


菜々花が家庭の事で悩んでいるなんて、少しも気が付かなかった。


不意に、蓮の声が聞きたくなった。


蓮の悩みはなんだろう?


蓮は、あたしにすべてさらけ出してくれるだろうか?


そんな思いからスマホを手に取っていた。


数回コールの後、蓮が出てくれた。


『もしもし?』


変わらない蓮の声が嬉しくて思わず涙が滲んだ。


今日だって沢山会話をしたのに、胸に切なさが渦巻いてくる。


「蓮……」


『里佳、どうかしたか?』