「それにね……今まで言えなかったんだけど、あたしの家結構逼迫してるんだよね」


「え?」


あたしは驚いて菜々花を見た。


菜々花は少し気まずそうに視線を伏せる。


「お父さんの勤めてた会社の経営が傾いてきてね、人員削減でどんどんリストラされてるの。


あたしの家も明日は我が身って感じでさ、無駄遣いとかあたしもできなくて。正直大学進学も無理かなって思ってたんだよね」


決意をしたように、菜々花は家庭の事情を話し始めた。


そのどれもが初めて聞く内容のものであたしは何も言えなくなってしまった。


「だけど、このミッションをクリアすれば大学にも行けるし、大企業に入って家を支えることだってできる! あたしにとっては千載一遇のチャンスなの!」


菜々花の目は真剣だった。


このミッションをやり遂げなければならない。


そんな熱意を感じられた。


「里佳の言いたいことはすごくよくわかる。だけど、あたしは拓巳よりも家族が大切なの」


菜々花はそう言うと、1人で教室を出て行ってしまったのだった。