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「あそこまでボコボコになるとは思わなかった」


昼休み。


誰もいない中庭のベンチであたしと朱音と菜々花の3人はお弁当を広げていた。


「やっぱり、仁の怪我はイジメ代行が原因なの?」


「たぶんね? 仁があそこまでやられたのは見たことがないし。だけど玲央が言っていた通り仁はいろんな人から恨まれてるだろうから、犯人が誰なのかはわからないよ?」


朱音は嬉しそうな顔をしてそう言った。


「でもさ、ずっと付き合ってた彼氏があんな風になって、朱音は悲しくないの?」


菜々花がそう聞くと、朱音は首を傾げた。


「どうして? 仁はずっとあたしで遊んでたんだよ? 騙して、都合よくつかわれてたのはあたしの方」


朱音の声に力がこもる。


仁への怒りで眉が吊り上がっている。


「次はどんなことが起こるんだろうね? 楽しみでワクワクしちゃう」


そう言って笑う朱音は、もうあたしの知っている朱音ではないような気がして、心に大きな穴が空いたような気がした。