朱音の言葉に菜々花が拓巳の方へ向いた。


拓巳は今日も顔に絆創膏を貼っている。


休み中にまた喧嘩でもしてきたのかもしれない。


「朱音の両親に相談しようよ」


やっとの思いであたしはそう言った。


朱音の両親ならなんとかしてくれるかもしれない。


「あぁ、それももうやめたの」


朱音がキッパリと言い切ったので、あたしは息を飲んだ。


「なんで? あんなに、どうやって相談しようかって悩んでたのに……」


「だけどさ、結局なんて相談すればいいかわからないし、口外してしまうリスクを背負うのは嫌なの」


朱音が言いたいことはわかる。


仁のために自分が背負うリスクを無くしてしまいたいのだ。


だけどそうなると、菜々花と拓巳の運命までガラリと変わってしまう。


菜々花は泣き出してしまいそうな顔を浮かべた。


朱音が協力してくれないのなら、自分の力でどうにかするしかない。


菜々花にとっては拓巳をイジメるか、イジメないかという二択になってしまったのだ。


「菜々花も早く行動した方がいいよ?」


朱音はそう言い、自分の席へ向かってしまったのだった。