朱音から聞いた噂が胸をよぎり、嫌な予感がする。


それでもここで逃げることもできなくて、あたしは朱音について7人へと近づいて行った。


「仁」


朱音が低い声で仁の名前を呼ぶと、椅子に座っていた仁が振り向いた。


朱音と視線がぶつかった瞬間、あからさまに顔をしかめる。


「あれ? 仁の元カノじゃん」


派手な女が朱音を見てニヤニヤと笑ってそう言った。


「本当だ! 面倒くさい親みたいな元カノさんだ」


もう1人がそう言い、ケラケラと笑う。


朱音が拳を握りしめるのが見えた。


必死で怒りを抑えているようだ。


「なんだよ、お前か」


仁は興味を失ったようにレーンの方へと視線を戻す。


「仁、どういう事?」


「なにがだよ」


仁がこちらを見ずに返事をする。