朱音の話だと、仁との約束の日は今日だったそうだ。


朝から会い、電車を使って海が見える場所まで行く予定だったらしい。


仁に電話をかけると、数回コールの後『もしもし?』という声が聞こえて来た。


間違いなく仁の声だ。


あたしはハッとして朱音を見る。


朱音は不安そうな顔をこちらへ向けている。


「もしもし、仁?」


『おぉ。なんだよ里佳。珍しいなお前が電話してくるなんて』


そう言う仁の後ろからは賑やかな音が聞こえて来る。


「仁、今どこにいるの?」


『今? 玲央たちとボーリング』


そう言った時、電話の向こうから笑い声が聞こえて来た。


あたしはチラリと朱音を見る。


地元のボーリング場なら数は限られている。