仁の口調が荒くなり、朱音がキュッと口を結ぶ。


仁は朱音にだけは優しかった。


どんなに暴力的な言葉を使っても、朱音を否定するような言葉は使わなかった。


それが今、変わりつつある。


あたしは不安を抱いたまま2人を見つめていることしかできなかった。


「あたしは仁に真面目になってほしいだけだよ」


朱音の声が震えている。


仁の態度が変わってしまう事を恐れているのかもしれない。


「うるせぇな」


仁は一言そう言うと、朱音の横ををすり抜けて教室を出て行ったのだった。