「どうしよう里佳……」


朱音があたしの手を握りしめて来る。


その手は小刻みに震えていた。


あたしは何も言えなかった。


イジメに失敗した生徒がどうなるのか、具体的にわかっていればなにか助言ができるかもしれなかったけれど、なにもわからない状況で軽口は叩けない。


「施設って、どうなところだと思う?」


不安げに聞いてくる朱音にハッとした。


朱音はすでに自分が施設へ送られることを視野に入れているのだ。


「わからない。でも……とても大変な場所だと思う」


あたしは昨日の桐嶋先輩の態度を思い出してそう言った。


イジメについては教えてくれたのに、施設についてはなにも教えてくれなかった。


青ざめて帰って行ってしまったことを思い出すと、とてつもない場所だということだけは考えられた。