「俺は最初からなにもかも知ってて入学した。最低な男だ」


蓮が静かに話し始めた。


ゆっくりと顔を上げ、上体を起こす。


「だけど、好きになっちまった。何があっても守りたいと思っちまった。里佳だけは誰にも傷つけられたくない。たとえ、叔父さんを殺してしまうことになっても」


完全に立ち上がった蓮の手には月明かりで光るナイフが握られていた。


由梨が一瞬息を飲む。


蓮の頬には涙が流れ、それが輝いてやけに綺麗に見えた。


「ほう。最初から叔父さんを殺すつもりだったのか?」


「それしかないと思った。どんな手を使っているのか知らないけれど、お前たちは必ず生徒の居場所を突き止める。どこにいても関係ない。それならもう、いっそ……」


蓮は震えていた。


ナイフを握りしめている両手も、体も、全部が震えていた。


そこまであたしの事を考えてくれているなんて思っていなくて、あたしは胸の奥が熱くなった。