由梨が服のポケットを確認してそう答えた。


スマホは持っていない。


あたしは公園に捨てて来た。


立石先生がここにいることはただの偶然……?


いや、そんなハズはない。


あたしは警戒し、数歩後ずさりをした。


「さぁ、早く戻ろう。終電が無くなる前に」


立石先生が手を差し伸べる。


あたしは由梨の手を強く握り、弾かれたように走り出した。


砂に足を取られて思うように走れない。


それでも止まることは許されなかった。


由梨も必死についてくる。


早く、早く、早く!


次の瞬間、由梨の手があたしから離れ、悲鳴が聞こえて来た。


ハッとして振り返ると立石先生が由梨に追いつき、その手を掴んでいた。