あたしと由梨は電車に揺られ、外に海が見えてきたころ、電車を降りた。


どの電車に乗ってどこまで来たのかわからない。


車内で聞いたアナウンスでは知らない街の名前が伝えられていた。


だけどその名前を聞いた瞬間、ようやく安心することができた。


いつもの場所から遠く離れた事で、少しだけ気分も落ち着いて来た。


海辺まで出たころには太陽はもうすっかり落ちていて、あたりは真っ暗だ。


波が押し寄せて来る音だけが聞こえて来る。


「どこまで行くの?」


ずっと黙っていた由梨がそう聞いて来た。


あたし由梨の手を握りしめたままだった。


「わからない。でも、どこか遠く」


そう返事をすると、由梨は楽しげな笑い声を上げた。


「なんだか駆け落ちみたいだね」


「なに言ってるの」


駆け落ちなんて、そんな楽しいものじゃないよ。

そう思い、夜の海を眺める。