確かに、立石先生の言っている通り由梨はいい生徒ではなったかもしれない。


だけど、この資料はもっとおかしな部分があった。


学校が休み期間の事まで書かれているし、これだけの事を把握しているのに、由梨は停学にすら合った経験がないことだ。


「立石先生これってどういうことなんですか……?」


やっとの思いでそう訊ねると、立石先生は資料を棚に戻しながら「停学にするのも退学にするのも簡単だ。だけど、1年生の内には猶予をやっているんだ。」と、答えた。


猶予期間……。


それは桐嶋先輩の言っていた事だ。


「その猶予期間に自分の愚かさに気が付き、自分自身で更生できた生徒は、ターゲットにはならない。

しかし、猶予期間を過ぎても何も気か付かない愚か者には、《イジメ.com》を適用する」


2年生に上がってからいくら頑張っても、それは無意味という事だ。


「それは覆らないんですか?」


蓮が聞く。


立石先生は静かに左右に首を振った。


「これは学校の決まり事だ」


立石先生はそれだけ言うと、あたしたちを資料室から追い出したのだった。