菜々花にはそれ以上何かを聞く事はできなかった。


施設で何があったのか質問しようとしても、菜々花はずっと震えているばかりだったのだ。


「里佳、ちょっといいか?」


放課後、蓮にそう声をかけられてあたしは持っていた鞄を一旦机に戻した。


教室の後ろへ移動すると、蓮が深刻そうな表情を浮かべる。


「由梨には申し訳ないけれど、ちゃんとミッションを遂行した方がいいと思う」


その言葉にあたしは返事を失ってしまった。


今日の菜々花の様子を見ていれば、そう言われるということは理解していた。


返事に困って黙っていると、蓮がゆっくりと深呼吸をした。


「立石先生に聞いたんだ。菜々花は一週間丁度で家に戻ってきていたらしい。けれど学校へ来ることができなくて、休んでたんだ」


「そうだったの?」


「あぁ。施設に行った生徒はそのまま引きこもりになる場合もあるらしい。菜々花は今日勇気を出して学校へ来たんだ」