さらっと答えた黒瀬君が、あれ、と不安そうに固まった私を見る。


「木戸さんは隊長より上だった?」


俺に準備完了です、って言ったから大丈夫だと思ったんだけど、失礼な設定だったかな、と続けた。


「いや、ええと……部下です、よ」

「そう? よかった」


何だかとっても部下思いそうだし、黒瀬君と一緒にいたら多分大抵大丈夫だし、部下がいいよ私。


でもまさか、送るよ、だなんて言われるとは思わなかったので、落ち着かない。


照れくさすぎて、何となく歩き始めた黒瀬君の後ろを歩いていると、苦笑した黒瀬君が鞄を軽く引いた。


「木戸さん、隣来て」

「……えっと」


今度は渋る私の手首を捕まえる。


「来てよ」


若干強めに引っ張られて、とす、と黒瀬君の隣におさまった。


戸惑いながら黒瀬君を見上げて。


「俺の隣は木戸さん専用ですよ」


優しく笑った黒瀬君がそんなことを言うから、え、と固まった。


そそそそれはどういう意味ですか。


「黒瀬く」

「あのね、俺が先行っても木戸さんの家分からないでしょ」


冷静に至極真っ当なことを返される。


「あ、うん。……そう、だよね」


びっくりした、と笑ったら。


「……それに危ないし」

「っ」


さらりと流れた黒髪からのぞいた耳が赤い。


握る手はじわりと熱かった。