風薫る

「ちょっ、ちょっと待って木戸さん」


「本気出すよー!」と出てきた木戸さんはスカートをまくっていた。

かなり、まくっていた。


腕まくりまでしているから冗談じゃないのは分かる。分かるけど。


「何でそんな短いの……?」

「あのね、そのまましっかりしゃがむと裾に土つくから」


分かった。

土予防なのは分かった、でも木戸さん、土つかない丈って結構短いんだよ知ってる……!?


「……駄目」


こつん、と軽く握った手を手の甲側から木戸さんの頭にのせた。これなら汚くない。


「え」

「駄目です」


戻して、と言いながら俺の目は横に流れた。


木戸さんは不満顔ながら下ろしてくれたけど、やっぱり納得いかないらしい。


水飲んでくるね、と駆け出してしまった。


しかもなかなか帰ってきてくれない。


……怒らせたかな。


でも、あれは駄目だ。下ろしてくれないと困る。


謝った方がいいかな。お詫びは何にしよう。


クローバー、いや本かな、と考え始めた俺の袖がふいに引かれた。


「あの、ごめん黒瀬君」


柔らかいのによく通る声が、ふわり、と耳朶を打つ。


しわにならないようにだろう、小さく小さく掴まれている。


振り向けば、複雑な表情の木戸さん。