風薫る

木戸さんがお母さんから図鑑をもらったって昨日言っていたので、俺も図鑑を見てみたのだ。


「探したら、図鑑って花言葉書いてあるのもあったから」


何でもないことみたいに付け足す。


「本屋さんで?」

「うん、そう。……って、あ」


間違った、言ってしまった。


うなだれる。これじゃあこっそり下調べした意味がない。


昨日の帰り、一緒に行けなかったのでせめて何か知識を入れておこうと思い立った俺は、近場の大きな書店に寄って、植物関連、特にシロツメクサを探した。


五分くらいなら帰りを急げば問題ない。

短い時間で読むのは慣れていた。


本を買いはしなかったけど、付け焼き刃の知識でも少しは役に立てば。

話題が広がるかもしれないのだし、覚えておいて損はない、と思いつつ、言うつもりはなくて。

なかったんだけど、言ってしまった。


……でもまあ、木戸さんがものすごくにこにこしているのでいいことにする。


恥ずかしいけど……!


「黒瀬君、ありがとう」


小さく鼻歌を歌い出した木戸さんが、満面の笑みで振り向いた。


「黒瀬君、早く行こう!」

「うん」


はしゃいで今にも走り出しそうな木戸さん。


公園はもうすぐだった。