風薫る

「嫌だった?」

「全然嫌じゃないけどものすっごく恥ずかしい」

「ええと、ごめんね……?」

「やだ、許さない」

「え、と……?」

「俺も褒める」

「黒瀬君」


むすりと拗ねた唇で、木戸さん、と私を呼んで。


照れて潤んだ瞳が、こちらを真っ直ぐに見上げる。


「一、木戸さんは可愛いです」


二、木戸さんは優しいです。


三、木戸さんは声が澄んでて綺麗です。


四、木戸さんは天然で、そこが長所です。


五、木戸さんは動きが可愛いです。


「六、……って駄目か」


黒瀬君が瞬きを一つ。手が離れていく。


「ねえ、木戸さん」

「う、うん」

「…………照れてよ」


ほんの少し掠れ声の黒瀬君の目が、私を見つめている。


「え?」

「照れて、木戸さん」

「黒瀬君?」

「照れて、よ。ずるいよ自分だけ平気なんてさ……俺だけ、」


俺だけ、馬鹿みたいじゃんか。


離れた黒瀬君の手が戻ってきた。ゆっくり私の髪をすく。