風薫る

「え!?」


微妙にむすりとしながら見上げると、黒瀬君が上ずった声を上げた。


「ちょっと待って、褒めないで! 意味分からないからね!?」

「だって、黒瀬君の親御さんのことはよく知らないから褒められないけれど、黒瀬君のことは知ってることあるから褒められるもの」


話したのは昨日だから、そんなにたくさんのことを知っているわけではないけれど。

でも、こちとら毎日のように図書室で黒瀬君を見てきたのだ。


ああ、あの本いいなって。きっとこういうジャンルが好きなんだろうなって。

話してみたいなって、ずっとずっと、去年から思ってたんだから。


褒めどころくらい、何回も見かければたくさん見つかる。


「え、いやあの」

「親御さんのことは上手く言えなかったから、黒瀬君のことはちゃんと褒めたいの」

「いやそうじゃなくて、俺はいいから……!
ほんとに! ほんとに俺は褒めなくていいから……!」


何だか黒瀬君が焦っているけれど、この際知らんぷりをしよう。

別に褒めるのは悪いことではないし、恥ずかしいかもしれないけれど気は悪くしないだろうし、怒りもしないだろう。


「木戸さん落ち着いて」

「一、黒瀬君は格好いいです」


にっこり笑う。


「うわあすんごく恥ずかしいんだけど……!」


目を合わせた私に、黒瀬君が真っ赤な顔を両手で覆った。


でも、無理に止めはしないから。


「二、黒瀬君は優しいです」


気にしないで、見つめたまま続ける。