風薫る

「楽しい思い出にするって、一個失敗すると大変だからね。思わず言っちゃったんだろうし、なおさら挽回に必死だったんじゃない?」

「う、うん。おかげで今はただ懐かしいよ。……ねえ黒瀬君、……エスパー?」


黒瀬君が噴いた。


「ごめん」

「いや、俺こそごめんね、ちょっとあんまり面白くて予想外だったから」


まだ迫り上がるらしくて、くすくす目を細めつつ、笑いを耐えるためにか唇を軽く噛む。


「あのね、エスパーじゃなくて経験談」

「経験談?」

「俺もクリスマス会から帰ってきて言ったんだよね、サンタが来たって。そうしたら」


うんうん。


「『それは偽のサンタよ。本当のサンタさんはお父さんなんだから! サンタさんは夜型なんだから!』って」


え、はい?


そう言いかけたのを慌てて飲み込む。


黒瀬君のお母さんのことを悪く言うだなんて申し訳ない。


口をつぐんだ、つぐみはした、のだけれど。


「いいよー、突っ込んで」


黒瀬君にはやはり、無理しているのが分かってしまったらしい。


「……ええと。ええーと」


何から突っ込んでいいのか……って、待て待て。


突っ込んじゃ駄目だ。失礼だもの。


むん、と口を結ぶ。