風薫る

「私は確かに、可愛くて美人な自慢の彼女にはなれないし、つり合いが取れないのも分かるし、もしかしたら、あなたの方が隣にいるのに相応しいのかもしれないけれど」


そんなこと関係ない。


「一緒に読書したいだけなの」


本について語り合うことならできる。それなら誰にも負けない自信がある。


「私は黒瀬君の彼女になりたくてここにいるんじゃなくて、黒瀬君と一緒に読書がしたくてここにいるの」


だって、私と黒瀬君は生粋の本好きなのだ。


……誰にも負けるものか。一緒に読書する楽しさを、誰にも譲るものか。


美しい女の子は綺麗に茶色にしている眉を思いっきり跳ね上げて、いらついたように腕を組み、足を鳴らしてこちらを見下ろした。


本棚に届かない私とは対照的に、彼女はすらりと背が高くて、それに伴うようにスタイルがよかった。


「はあ? だから何? そんなこと何になると思ってんの? 馬鹿じゃないの?」


本なんか読むより、デートした方が楽しいに決まってんじゃん。


「っ」


そんなこと、と言うのか。私たちの宝物を貶めるのか。


この、宝物のような場所で。本にあふれた、図書室で。本好きに向かって。

読書を、そんなこと、と。


それは、私たちのことを貶めたのと、好きな人のことを――黒瀬君のことを馬鹿にしたのと、同じではないのか。