風薫る

……やめよう。黒瀬君の邪魔はしたくない。


ゆっくりゆっくり、気持ちに整理をする。


軽蔑しないの、迷惑じゃないの、と黒瀬君は尋ねたけれど。


図書館に来るのは初めから約束していた。

ご飯は食べられなくなっちゃったけれど、また今度にすればいい。


学校での視線は、さすがに今日はびっくりしたけれど、今までだって注目されることがあったから慣れてる。


少しは怖くなくなってきたんだよ。

それに、笑っていれば大丈夫だって黒瀬君が教えてくれた。

そのおまじないで乗り切ってきたんだから、これからも乗り切っていけるはず。


「黒瀬君」


そっと呼ぶ。思いが通じたように顔を上げてくれたから、私はおまじないの笑顔で笑ってみせた。


「私はそんなに律儀でも義理堅くもないよ」


だから、大丈夫だよ。軽蔑なんてしないよ。むしろ、ずるい私が軽蔑されちゃう方かもしれない。


「今日だって本当は私一人で帰れたのに、黒瀬君と一緒に帰りたいから、図書館で待ってるなんて言ったんだよ」