風薫る

……これは、どういうこと?


放課後。


いつもは忘れ去られたように静かで、私と黒瀬君、司書さんくらいしかいない図書室が。

木と本とインクとお日様と、季節の匂いがする、大好きで穏やかな部屋が。

どういうわけか、広さいっぱいに人がごった返し、異様に混んでいる。


扉の小窓から飛び込んできた景色に、思わず足を止めた。


おかしい。……絶対おかしい。どうして急に。


……女の子が多いのは、もしかして、黒瀬君が通っているって聞きつけたから、だろうか。


戸惑いながら、黒瀬君がいるかもしれないと、とにもかくにも引き戸を開ける。


がらり、立て付けの悪さゆえに響いた音で視線が集まって、こちらに鋭く集中した。


「っ」


興味深々に私を見る人、目を見張る人、にらむ、人。


その誰もが本を持っていなかった。読書をしていなかった。


ただただ、暇そうに、誰かを待つように、目当てのものを待ち構えるように、座って。何もせずに座っている。


……図書室にいるのに、どうして、誰も目の前の本を読まないの。