風薫る

「わくわくするね」

「ね!」


ひとしきり笑い合ってから、メニューを手に取る。


冊子のそれが本を思わせて、静かな高揚に拍車をかけた。


席に座ってすぐに照れているのを自覚して、なおさら照れる。


どれにする? と聞いたときにメニュー上で目がばっちり合ってしまったのがいけなかった。


向かい合うってこんなに恥ずかしいんだね……!

わああ、顔が熱い……!! なんというかこう、熱い! 火が出そう!


大抵隣だから気がつかなかった。


隣に黒瀬君がいる状況にもう慣れてはいるけれど、その慣れだって、時間がかかったのに。


びっくりはさすがにしなくなったけれど、黒瀬君が隣に並ぶだけで、なんだかふわふわしてしまうのは今だに変わらない。


駄目、だめだよこのままじゃ、


「わたしが沸騰する……!」


お冷やを煽って一人むせた私に驚いて瞠目した黒瀬君が、心配そうに覗き込んだ。


「木戸さん? どうしたの、大丈夫?」


大丈夫です、大丈夫だから顔を近づけないでー!


心配してくれているのになんなんだと言われても仕方がない緊張度合い。


「うっ、うん。大丈夫」


ちょっといろいろあってですね、と弁明を始めた私。