風薫る

恥ずかしすぎて、何かしらの仕返しをしようと質問を返す。


「黒瀬君は?」

「ん?」


意気込んで尋ねた私に、黒瀬君は意味を図りかねて首を傾げてみせた。


どういうこと、と立ち止まる黒瀬君に、補足して質問を繰り返す。


「黒瀬君は嫌じゃない? 困らない?」

「嫌じゃないよ」


ちょっとだけ怖気づいていろいろを抜かした質問をしたら、返ってきたのは即答だった。

多分、本心だ。


黒瀬君は優しいから基本気遣いを悟らせないけれど、これは間違いない。

このタイミングは、するりとこぼれたような即答は、きっと本心。


ふわりと心が浮いた。


「……じゃあ、今度から、見かけたら話かけてもいい?」


わくわく躍る胸を内心見つけながら黒瀬君を振り仰ぐ。


不安もあるけれど、喜びよりも何よりも一番は、期待だろうか。


「隣来て、ね」


目が合った黒瀬君はいたずらっ子のように目を瞬かせた。


口元が笑っている。


「うん。隣に行って」


私もつられて笑いが移って、おかしくて思わずころころ鳴った喉とともに微笑みがこぼれた。


「待ってる。俺も行く」

「私も、待ってる」


何度目かしれない約束を結び直す。


途切れる前にもう一回、もう一回って結び直し続ける口約束は、音にする度色づく気がした。