風薫る

固まった私に、駄目? なんてかすれ声で聞くけれど、疑問符がずるかった。


せめて疑問符がついていなければ曖昧にできたのに、答える選択しか残されていない。


「駄目かな、木戸さん」


返答を促すみたいな再びの問いかけは、黒瀬君の優しさで。


呼ばれた名前が淡く空気に溶け消えて、優しく鼓膜を揺らしていって、うるさく速まる心音を聞いた。


どこまでも温かい黒瀬君の声が好き。

黒瀬君の鮮明な発声で紡ぐ言い方が好き。

はきはき話すのに穏やかで優しい。


はにかむと笑顔がちょっぴり可愛くなるところが好き。


「……だめじゃないよ」


駄目なはずがない。


途切れ途切れでも何とか引き出した私に、ありがとう、と黒瀬君は少し顔を赤らめた。