風薫る

「だ、だいじょうぶ!」


深呼吸して、大きく頷き気合いを入れるも、逆に力んで落としそうになった。


慌てて体勢を整える。


不器用かな! 不器用なのかな私……!


頑張れ頑張れ、と自分に声援を送りつつ構えると、軽やかな笑い声がした。


「あーんとかしようか、俺」


笑いを多分に含んだ提案にぶんぶん首を振る。


視線はあまりの羞恥に耐えきれなくて横に流れた。


「大丈夫です……!」


黒瀬君のお馬鹿、

あーんとか、……あーんとか、何言ってるのお馬鹿、


「はい、あーん」


そしてなんで本当にやろうとしているの……!


いつの間にかちゃっかり飴の袋は黒瀬君の掌中で、飴玉は彼の指先に収まっている。


にっこり笑って差し出す黒瀬君に困って眉を下げたけれど、やめてはもらえなかった。


目を合わせて、

合った視線にぱっと下げて、……そろりと上げて、


流麗に微笑まれて、降参する。


せめてもの抵抗として、もう何度目かも分からないけれど、私は目線をじりじりと下向けた。


「あーん」

「……~~っ」


唇をぱくぱく動かしてしまったのは仕方がないはずだよ、うん。


羞恥に耐えながら小さく口を開くと、軽く触れた指先から押し出された桃色が口内に甘さを広げた。


うん。

多分私は今、真っ赤に違いない。