風薫る

「……うん」


あまりに何気なく自然に言われたからか、戸惑っていたのも忘れてすとんと頷いていた。

飴の袋を受け取って、よし、と開けようとして。


「……あれ?」


手が滑る。


よおし、ともう一度しっかり両手で掴んで、ギザギザしているところを強く押さえて引くも、ぎゅっと引っ張っただけになってしまった。


……あれ……?

全然開かないけれどどうしよう……!


焦ってますます引っ張ってみたけれど、全くもって開かない気配に慌てていると、口に橙色を放った黒瀬君が悪戦苦闘する私に手を差し伸べてくれた。


「あれ、ごめんね、固かったのかな。俺が開けようか?」

「うう、ごめんね。お願いします」


いいえ、と快く受け取ってくれた黒瀬君の手であまりにもあっけなく破れたそれ。


私は何だかものすごく恥ずかしくなって、ぴしりと数秒間二人で固まった後、思わず弁明した。


「いつもはちゃんと開けられるから……!」

「分かってる」


苦笑した黒瀬君は、はい、と、先ほどと同様に開けた飴の袋を私の手のひらに置いてくれた。


端から少し桃色がのぞいている。


「ありがとう」

「どういたしまして」


口に入れようとしたところで、黒瀬君が何気なく言った言葉に動きが停止した。


「常に飴の袋を開けられない人が高校生にいたら、さすがにびっくりするもん、俺」