風薫る

「木戸さん、飴は食べられそう?」

「食べられるよ」


よかった、と笑って、黒瀬君はその手に二つ小袋をのせた。


果実の種類が豊富で粒が大きいのが売りののど飴で、甘すぎない種類なのは黒瀬君の気遣いかな。


ポケットはまだ少し膨らんでいるから、他の飴が入っている可能性は充分にある。


もし気遣いだとしたら、とても細やかで優しくて、黒瀬君らしかった。


「桃とオレンジならどっちが好き?」

「桃の方が好きだけれど……」

「じゃあ俺はオレンジにしようかな」


よく分からないまま返事をした私に、穏やかに呟いて、はい、と笑って桃の方を差し出した。


「え」


大きな手元から目線を上げる。


綺麗に目を合わせて、黒瀬君は促すように微笑んでいる。


「あげる」

「ありがとう……」


受け取ったはいいものの、なんだかまだ頭が追いつかなくて、包みをのせたまま動かない私を覗き込む黒瀬君。


急に鼻先が触れそうなくらい近くに顔があったものだから、びっくりして目を見開くと、黒瀬君は優しい微笑みでオレンジの袋をかざした。


「一緒に食べよう、木戸さん」