「葵が…」




舜が私の耳元で何かボソッと言ったけど水の音で聞こえなかった




「なに?」




水を止めてそう聞くと舜は抱きしめていた手を離して私の体を自分の方へと向かせた




目線と目線がぶつかる




少しの沈黙がすごく長く感じる




「お前が俺の前からいなくなりそうで怖いんだよ…」




舜の口から出たその言葉はとても弱く今にも消えてしまいそうだった




「いなくなるわけないじゃない」




そう言って私は舜を力一杯抱きしめた




「約束してくれ…」




さっきまでの威勢はどこに行ったのやら今の舜はまるで傷だらけの子猫のようだ




「うん、約束するよ!
私は何があっても舜のそばから離れないよ!」




そう言って私は舜のことを力一杯に抱きしめた




「ほら、デザートもあるからさ、早く食べよ?」




「ああ、そうするか」




そう言って舜が見せた笑顔はさっきよりもずっと顔色が良くなっている気がして少しホッとした