「もうバス停そこなんで」
と大通りの少し先を指差しながら、なんだか不思議だな、と思っていた。

 出会ってから、こんな風に二人でゆっくり歩いたことなんてなかったな、と思う。

 まるで今の方がデートしているみたいだ。

 でも、こんな落ち着いた気分で、この人と居られるのは、きっと別れたからだろうな、とも思っていた。

「じゃあ、失礼します」
と茅野が頭を下げると、鞄から、ゴトッと黒いものが落ちた。

 トートバッグに入れていた紙袋の口が開いていたらしい。

「……おい。
 なにか落ちたぞ」

 なんだ、これは、と一見、懐中電灯のようなそれを拾う。

「そういえば、なにか買ってたな」
と言う秀行に、

「ネットランチャーです」
と言った。

「撃つと蜘蛛の巣状のネットが飛び出し、敵を捕獲します」

「……敵って誰だ」
とネットランチャーを手に、敵が言う。