上から覗き込み、
「もしかしたら、買う人が超危険なの人なのかもしれないですね」
と言うと、

「……売っちゃ駄目だろ、それ」
と言う。

 ふふふ、と笑うと、穂積は黙ってこちらを見ていた。

 ソファに割引券を置くと、茅野の腕をつかんで引き寄せ、キスしてくる。

 なんだか夢のようだな、と思っていた。

 秀行さんと結婚したときに、もうこんな瞬間は自分の人生には絶対に訪れないと思っていたのに。

 だが、何度かキスしたあと、穂積は言った。

「もう遅いな。
 送っていこう」

 さっき来たのに、と思ったが、穂積は立ち上がる。

「行こう」
と茅野を促す。

「……はい」

 もうちょっと長く一緒に居たいなとか思っているのは、私だけなのでしょうか、とその広い背中を見ながら、茅野は思っていた。