「なんだ。
 防犯グッズの店の割引券って」

 今日は穂積と約束していたので、茅野は、彼のマンションに来ていた。

 ソファに座る穂積は、茅野の渡した割引券を裏に表に返して見ながら、
「それ、本当に防犯グッズの店なのか?
 お前がそう思ってるだけなんじゃないのか?」
と訊いてくる。

「さあー?
 でも、すごく親身になってくれるいい方ですよ、店員さん。

 今日はスーツを着てらして、髪型も普通で、格好良くてびっくりしました」
と珈琲カップの載ったお盆を手に言うと、穂積は無言になる。

「大丈夫です。
 穂積さんも格好いいです」

「なに淡々と言ってるんだ。

 っていうか、なんだ、これは」
と割引券を見ながら言ってくる。

「初心者用セット、超危険な人用セット……。

 超危険な状態の奴はそんなもの買いに行ってないで、とりあえず、出歩くな」
と最もなことを言っていた。