虫取りから1週間が過ぎ、セミの声も暑さも激しさを増した8月。
花壇にいる虫屋を見かけても、部活中に声をかけるわけにもいかず、終わる頃には姿が見えなくなっていること数回。
そんな折、カレシから連絡が来た。
お祭りに行けなくなった代わりに、デートしようって。
私の思い描くキスをしてあげるからと言われた瞬間、即座に電話を切った。
嫌われたっていい。
浮気されたって構わない。
今は、そんなことどうでもよかった。
好きな高跳びで後悔したくない。
「ナミ、真っ黒だよ?男子は白肌派が多いから、ちゃんと日焼け止めを塗ったほうがいよ」
どうでもいい。
「部活早めに切り上げて、新しくできたカフェに寄ろうよ」
どうでもいい。
「最近、ナミって付き合い悪いよね」
どうでもいい。
「彼氏とどこまでいった?やっぱり夏はヤバイよね?」
マジでどうでもいい。
「ごめん、私、もう少し練習したいから」
誰になんと言われようと、今、私がやりたいのは高跳びだった。
そのことに、もっと早く気付けていたら良かったのに。
私は、目標とする高さを練習では跳べないまま、大会を向かえることとなった。



