ウォーキングコース……ではなく玄関までの道を黒崎さんと歩く。
久しぶりだなぁ。
手入れの行き届いた庭を抜けたら、大きな噴水が見える。
そういえばラスボスはもう日本にいるんだろうか?
私がキョロキョロと見回していたら、
「安心してください。旦那様はロスで業務を行なっており、現在はこの家を空けておられます」
「うっ……。黒崎さんには、なんでもお見通しですね」
「幼少期から明里様と椿様を見てきましたから」
確かに黒崎さんはいつだって椿のそばにいて、あのラスボスに怒鳴られることも少なくはなかったな。
「この家の側近の方は、なんだかとても大変そうですね」
特にラスボスに仕えることが……。
「めっそうもございません。わたくしを救ってくださった椿様のためなら、例え地獄でさえも喜んで飛び込みます」
え?
椿が黒崎さんを救った?
黒崎さんの声がとても穏やかに聞こえた。
使用人と王子にも歴史があるんだろうか。
「椿様。明里様がお越しくださいました。失礼致します」



