「触れようと思えばすぐにでも触れられる距離にいれる」



だからまたそういうことを……。



「なんなら、カリキュラム以外のことも教えてやろうか?」



……と、私に口づけをするような仕草をしてみせる。



ガシャンッ!!


反対側でランチをお召し上がりになっていたお嬢様がいよいよ顔面からフォアグラに崩れ落ちた音が響き渡る。



「だから、こういうこともダメだってば……っもう!!」



ドンッと私は手を伸ばして椿にストップをかける。



「なにこれ。もしかして俺、お預けくらってんの?」


「そ、そうじゃなくて。とにかく祭典まで時間が足りないくらいなんだから……っ」


「祭典が終わればいくらでも触っていいってこと?」


「いいわけないでしょ……!!」



触るって、なに考えてんのよ。



こうして私は、椿に特別レッスンをしてもらうことになったのだ。



────まさか、甘く強引な王子様の手ほどきを受けるとも知らずに。