ムッと唇を尖らせていると、椿が私の顎をつまんだ。
先ほどよりも椿の端正な顔が視界を埋めていって、まさか冗談じゃなくホントにキスされるの……?
そう思った直後。
ムギュっ……と、顔を抑え込まれた。
「………ちょっと、今度はなにすんのよっ」
唇がタコみたいになっているだろう。
けど、椿は悪びれるどころか挑戦的な顔をしている。
「親父と取引きしたってどういうつもり?」
……ドキンッ!!
ちょ、ちょっと待ってよ!!
なんで椿にバレてるの……?
てか……全てお見通しでここに来て、今まですました顔してて、カフェラテなんか飲んだりしてたの?
契約のことがとっくにバレてたなんて、全然わからなかった。
さすがラスボスの息子……。
「お前から話してこないし。まさか俺に隠し通せるとでも思ってた?」
「……違うっ。隠してたわけじゃなくて」
いきなり青薔薇の称号が欲しいとか、ラスボスと取引きしたとか、そういう経緯をどう話そうか迷ったのはある。



