「はぁ。行きたくない。明里がいない世界なんて、なんの意味もないのに」
椿には椿の輝かしい未来がある。
きっと今までみたいに簡単に会うことも遊ぶことも出来ないんだろうなってことは、もうとっくにわかっていた。
椿はしばらくなにかを考えているような顔をして見せる。
「明里は大人になったら誰と結婚するんだろうね」
「……け、結婚!?」
驚いた。
結婚なんて、子供の私には考えたことなんてないんだもん。
あわてふためいた私を見て、椿がクスクス笑った。
「俺は明里といたいな。大人になってもずっと。叶わない願いかもしれないけど」
「どうして叶わないって思うの……?」
「俺の未来は生まれた時から決まってるって、父さんに言われてるから」
……決まってる?
どういう意味かわならなくて首を傾げた。
「でも俺は、欲しいものは絶対手に入れてみせるけどね」
まるで独り言みたいに呟いた椿。
だけど、その横顔には覚悟みたいなものを感じた。
椿がどんな意味を込めて言ったのかわからないまま、その会話を最後に、私と椿は離れたのだ。