「あっ。あそこ、誰か遊んでるのかな」
「あそこは公園だからね。ドッジボールしてるんだよ!私はいっつもすぐ当てられちゃうんだけど、楽しいよ!」
椿は不思議そうに公園を見ていた。
もしかしたら、王子様は外の世界を知らないのかもしれない。
次々に飛んでくる椿の質問に答えていると、習い事の場所に停車した。
「一緒に乗ってくれてありがとう。俺の知らないことを、明里はなんでも知ってるんだね」
にこやかな笑みを見せてくれた椿。
それが椿と会った初めての出来事だったのだ。
それからというもの、私は椿のお城に招待されるようになった。
「手ぶらでなんて失礼だわ……!」
……と、両親は手土産に町内一のデパートで買ったクッキーの詰め合わせを持たせたりもした。
「カルタ?俺は知らない。黒崎といつも遊んでるポーカーとは違うの?」
「ポーカー!?な……なにそれ……」
「知らないなら俺が教えてあげるね。ポーカーに飽きたら映画でも見よ?」
ホームシアターまで完備されている椿の部屋はどんな物でもあって、まるで宝箱みたいだった。



