お父さんとお母さんが作るお豆腐は優しい味がして私も大好きなんだ。


そんな昭和に取り残された古臭い店なんか辞めちまえ!!と、親戚から言われることもあったけど、優しい味を残したいと今でも営業している。



「いらっしゃいませー!麻婆豆腐に木綿豆腐はいかがですかー!」



私もお手伝いをしてお店に立っていたある日。


こちらに背を向けて、ポツンとお店の前に立ち尽くす男の子がいた。



……あれ? お客さんかな?



「いらっしゃいませー!」


声をかけると、ぱっと振り返った男の子の綺麗な顔に私はビックリした。


わぁ!!


栗色の髪……灰色の瞳……まるで、王子様みたい……。


チェックのズボンにピシッとしたシャツ。


着ている洋服ですら私にはお目にかかったことがない物だった。