「青い、薔薇……?」



椿と火神さんを交互に見ると、ふたりが相槌を打つ。


この青薔薇学園の象徴。


ホール内の至る所には、儚げで美しい青い薔薇が彩りを添えていた。



「明里」



椿の灰色の瞳が、私を真っ直ぐに見つめる。


息を飲む。



「聞いてくれる?」



……と、椿は私の前に膝をつく。



───まるで、おとぎ話の中の王子様みたいに。




「椿?」



ただただ驚く私の手をとるから、椿の温度を感じて、鼓動が波打った。



「俺の世界には、いつもお前がいた」



ゆっくり私を見上げる椿の瞳は、いつになく真剣で。



「あの暗い家から俺を連れ出してくれた。明里に出逢う前の俺の世界は、俺の瞳の色と同じで、灰色で───」



胸の奥に椿の声が染みるように広がっていく。



「でも、明里と出逢って色づき始めた。だから、お前がいないと俺の世界なんて一瞬で止まるんだよね」


「な、なに言って……」


「本気で言ってるよ?」



やっぱり椿はそんな恥ずかしくなるようなことを躊躇いもせずに言う。



嬉しいのに、恥ずかしくて……。