「……いっ、今。豆腐屋が……椿様を呼び捨てにしたわよ!なんて無礼なの!」


「ええ。わたくしも……しっかりと聞きましたわ!このほとばしる高貴さが分からないのかしら!?これだから、庶民の外部入学には反対だったのよ!」



一斉に向けられる視線と批難の声。


ああ……詰んだ。

やらかした。

この学園での人権はすぐにでも剥奪だ。



「……つ、椿様!近づいてはいけませんよ!あの者は、外部入学の庶民なんです!貧乏臭さが飛んできてしまいますわ!」



私は病原体の一種か……。


こんな言われように、気まずさと恥ずかしさが押し寄せてきて、穴があったらすぐにでも入りたい。



「椿様……!?どちらへ!?」



取り囲むお嬢様達の集団をスマートに掻き分ける椿が、こちらに視線を投げているのが見えた。


次第に近づく距離。


そして、灰色がかった椿の綺麗な瞳と目が合って……



「お前の声にすぐに反応するとか。重症か、俺」



フッ、と自重気味な笑みをもらしながら、椿は私の席の前まで歩み寄った。