これだけ騒がれても何ひとつ動じることのない椿。


その風格というか……椿の放つ雰囲気は私の知る幼なじみではなく、完璧な王子の姿だとさえ思う。



「なぁに明里?初めて王子のこと見たせいか、釘付けじゃない?」



火神さんが小さく笑いながら、ツンっと私の肩をつついた。



「……っ、私は別に、椿に釘付けなわけじゃなくて、ですねっ!!」



ブンブン手を振り回しながら言う私を、火神さんはポカンとした顔で見ていた。



ハッ……!!


しまった。


つい、今までの癖で“ 椿 ”なんて呼んでしまった。



それに加え、全力で否定しようとした結果、声のボリュームがマックスになっていたではないか。


そんな私の言動に、顎が外れそうなくらい口を開けて驚くお嬢様方の顔面は青くなっている。