「俺の親父に仕事を紹介してくれて、まぁ助けてくれたわけ。んで、俺にはピアノを弾ける環境も与えるって言った……けど、その代わり───」



戸澤くんが声を詰まらせる。


陽気に見せていたはずの表情が変わる。


眉根が苦しそうに歪んだ。



「“二度と、なことは関わらないでほしい”って」



絞り出すように吐き出された言葉は、とても他人事とは思えなかった。



「俺はなこちゃんに会いにいった。会いにいったのに……なんも言えねーまんま。情けないだろ?」


「……なぜだ!?キミにとって、とても大切な存在だったろうに!むざむざと手放したということか!?」



蒼ノ月様は納得がいかないのか激しい剣幕で訴えた。



「……言えるわけないんだよ。俺みたいな奴が、なこのそばにいたいだなんて」



悲しげに揺れる瞳に、蒼ノ月様はそれ以上の追求をやめた。