「今は他人みたいな言い方をするではないか?それは、どうしてなんだ?」
蒼ノ月様が疑問を抱いて質問した。
「関わらない約束だから」
「え……?」
私がビックリして声を漏らすと、戸澤くんは話し始めた。
「元々家が近所で。なこちゃんは大鳳家のお姫様。俺には無縁の存在だったんだ」
庶民とお姫様……。
私と椿とますます重なった。
「たまたま音楽スクールに見学に行ったら、そこになこちゃんがいた。俺が弾いたピアノをすげぇ綺麗な音だねって褒めてくれたのがきっかけでさ」
懐かしむような口調で戸澤くんは続けた。
「でも、残念ながら俺ん家にはピアノがないからスクールでしか弾けなかったんだけど。なこちゃんが、自分のレッスンの日に先生が来るから、響くんも家に来て一緒に弾けばいいじゃないって言ってくれたんだ」
撫子様のピアノの先生は確か……。



