このふたりって……。
たったそれだけで、ふたりがずっと昔からお互いをよく知っているのだと伝わってくる。
「本当に……ピアノを弾いてたのね」
「これ出してくれたの、なこちゃんでしょ?」
ポケットから取り出したのは、あの入学許可証だ。
戸澤くんはそれを、いつだって肌身離さず持っていたのを知っている。
あの許可証は、撫子様からのものだったの?
疑問が飛び交う中、うん、と微かに頷いた撫子様が困ったみたいに笑った。
私は状況がなかなか呑み込めないまま、ただただふたりを見ている。
「ありがとう。あと……婚約、おめでとう」
「……っ、」
ぎこちなく伝えた戸澤くんに、撫子様の瞳がハッとしたように大きく開かれた。
「なにもしてやれないけどさ……祭典では俺がピアノ弾くかもしれないから、しっかり練習しとくよ」
「うん。ありがとう。わたしは嬉しいよ。響くんがピアノを弾いてくれるだけで……」
そう言った撫子様の声が震えていた。



