「前から内々に話しは進んでいたそうよ」


「ということは、あのおふた方のことですもの、祭典での発表もありうるということよね!?あぁ……神々しいおふたりの電撃婚約発表に立ち会えるなんて!」



周りのお嬢様方の興奮冷めやらぬ声に、私は動揺を隠せない。



ちょ、ちょっと待って……?


そのふたりっていうのはまさか───



「王子と撫子様が婚約するって話、明里は知らなかったのか!?」



口調からも火神さんの慌てっぷりが伝わってくる。



あまりにも突然の情報に混乱して反応出来ない。



椿と撫子様が………?


ふたりが婚約って……。



私はもちろん知らないし、幼なじみだからといって知らされるわけじゃない。



それに、椿からはなにも聞いていないのは事実。



この前、階段でふたりで話していたことはもしやそのこと……?



撫子様も、もう決まったことだとか言っていた覚えがあるし……。



途端に湧き上がる不安や焦りがぐるぐると渦巻いていた。